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医学部の入試動向

2007年度医学部の入試動向

【少子化の影響はほぼなし!】
4年連続で過去最高の志願者数を更新してきた私立医学部だが、2006年度入試でも過去最高の志願者数を更新した。2007年度入試より理論的には大学全入時代が到来するが、こと医学部に関してはそのような状況とは無縁のようである。医学部人気に加え、昭和40年代に設置されたいわゆる新設医大卒の医師の子弟が受験期を迎えつつある今、医学部の受験生は少子化の恩恵を受けにくい状況が続くと考えられる。また、国公立の難化に加え、センター利用入試が呼び水となり、以前と比べると国公立大学を志望する受験生が私立医学部難関校を受験するケースも増えてきている。
 では2006年度入試について細かく見ていきたい。まず推薦入試であるが、前年より317名志願者を増やしている。主なところでは川崎医科大学の92名増が目立つ。川崎医科大学では推薦の現浪制限をなくし、評定平均の設定をなくしたことにより志願者を大幅に伸ばした。その他の大学でも志願者を増やしているところが多く、推薦入試といえども徐々に倍率が高くなってきている。特に公募制では年々ハードルが高くなってきているようである。また、2005年度入試で700名を超える志願者を集めた東海大学の編入試験であるが2006年度入試でも同様に683名の志願者を集めた。倍率は15倍を超え高い人気を誇っている。医学部再受験の熱気もまだまだ続いているようである。
 では一般入試での動きはどうであっただろうか。新課程へ移行措置の中、影響が懸念されたが、出題内容にもほぼ問題はなく、大きな影響はなかったようである。新課程への移行にあわせて数学の試験範囲に新たに数学Ⅲを加えた大学が5校あったが、いずれの大学も志願者を大幅に減らすことはなかった。金沢医科大学では逆に198名志願者を増やしており、数学試験範囲の変更による影響もあまりなかったようである。志願者総数としては2006年度は66,119名と前年に比べ2,245名志願者を増やした。少子化の影響で受験生を集めるのに苦労する大学が多い中、私立医学部は5年続けて志願者を増やしている。しかし増加の内訳を見てみると、新規に導入した大阪医科大学を含めたセンター利用入試の志願者数の増加が856名、国公立大学と日程をずらした産業医科大学が696名志願者を増やしており、実質的には一般入試での増加は693名にとどまっている。2006年度は入試日程の重複が多かったことが一因だろう。そのなかで大幅に志願者を増やしたのは、東京医科大学(587名増)と日本大学(623名増)の2校である。両校はともに2006年度入試においては他大学と試験日程が重複しておらず、志願者を集めたようである。しかし日本大学は2005年度入試にも他大学と試験日程は重複しておらず、これだけの志願者の増加は予想外の出来事であった。また、3校の試験日が重複した1月28日は東京慈恵会医科大学が248名、東邦大学が698名志願者を減らした。さらに4校が重複した1月29日では藤田保健衛生大学が275名、近畿大学が397名志願者を減らす結果となった。これら試験日程の重複により、受験校数が限られてしまった受験生が上記の2校に集中したようである。

■2006年度私立医学部志願者数(推薦入試)(人)
04年度 05年度 06年度
岩手医科大 公募 70 50 71
獨協医科大 指定校 63 38 69
AO 67 47 91
埼玉医科大 指定校含 45 48 43
東京医科大 公募 93 88 87
東京女子医科大 指定校 - 8 8
公募 81 72 94
北里大 指定校 49 35 36
聖マリ医科大 指定校 37 56 51
金沢医科大 公募 64 72 90
AO 134 155 173
愛知医科大 公募 24 38 40
推薦依頼 31 37 32
藤田保健衛生大 公募 379 407 402
関西医科大 公募 70 72 69
近畿大 公募 216 272 288
兵庫医科大 公募 81 79 79
川崎医科大 特別推薦※ 128 105 197
久留米大 公募 53 51 60
産業医科大 公募 65 86 123
福岡大 公募 106 130 160
合計 - 2,130 1,946 2,263

※05年度まで附属含む公募の人数、06年度より特別推薦の人数。


【一人当たりの受験校数は増加傾向】
さて、2002年度より5年連続で志願者を増やしてきた私立医学部であるがここでこの5年間どのように志願者数を増やしてきたのかを見ておきたい。2002年度入試では51,613名であった志願者数であるが、2006年度入試では66,119名とこの5年間で14,506名増加した。このなかで大きな割合を占めているのが、センター利用入試や入試改革などによる試験日程の変更である。
まずセンター利用入試であるが、2002年度入試では実施していたのが獨協医科大学と近畿大学の2校のみであり、その志願者総数はわずか1,472名であった。それが2006年度入試では実施大学は7校に増え、志願者数は5,448名に増加した。実に3,976名の増加である。センター利用入試は一般入試に比べ、入学へのハードルが明らかに高い。国公立レベルの受験生が難易度を押し上げているようだ。またセンター利用入試導入に伴い一般入試での募集枠が削られるケースが多く、一般入試の難易度もあわせて上がる傾向にある。あくまでも我々の実感としてだが、このセンター利用入試の増加にあわせて、国公立レベルの受験生が私立医学部を併願するケースが以前より増えてきたように感じる。
また2003年度入試から東京慈恵会医科大学の前期試験が実施され、2004年度入試からは昭和大学はⅡ期試験を導入した。さらに2005年度入試では帝京大学は試験日を2日間から3日間へと増やした。これら受験機会の増加による志願者増が約6,000名ほどである。センター利用入試とあわせると約10,000名の増加となり、この5年間の志願者数の増加の大半が、センター利用入試を含めた受験機会の増加によってもたらされたものであるということがわかる。
また、入試形態に変更がないにもかかわらず、岩手医科大学は2002年度868名から2006年度では1783名と915名志願者を増やしている。試験日が重複しない1月中旬に日程を移した影響が大きいが、ほぼ倍増している。他ではここ5年間で埼玉医科大学が622名、川崎医科大学が535名、久留米大学が686名それぞれ志願者を増やしている。九州地区では福岡大学も436名志願者を増やしており、あわせて1122名の増加となっている。東京や大阪で受験できる大学が増えている影響もあるが、医学部に入れるものなら地域にはこだわらない受験生が増えてきている点も見逃せない。また、東京周辺や大阪周辺の人気校は国公立レベルの受験生や再受験生の増加の影響を受け、難易度が上がっていることも一因だろう。
この5年間で私立医学部は志願者を大幅に増やしてきたが、その内容はセンター利用入試の導入などによって新たに設けられた受験機会による増加や受験生の意識の変化によって地方校やいわゆるボーダー校への受験意欲が高まってきたことによるものがほとんどである。これだけ志願者数が増えれば入試難易度もかなり上昇していいはずであるが、現実には入試難易度はほぼ横ばいもしくはやや上昇といった程度である。上記のような国公立レベルの生徒が一部私立に流れてきているという以外には実質的には大きな影響を与えていない。再受験生の増加といった要因もあるが、受験機会の増加による一人ひとりの受験生の受験校数の増加がここ近年の志願者数の増加の一番の要因であろう。

■2006年度私立医学部志願者数(一般入試)(人)
2004年度 2005年度 2006年度
岩手医科大 一般 1,680 1,835 1,783
自治医科大 一般 2,015 2,262 2,278
獨協医科大 一般 1,469 1,632 1,562
センター 952 1,009 1,076
埼玉医科大 一般 2,452 2,746 2,664
杏林大 一般 2,315 2,282 2,160
センター 1,491 1,466 1,593
慶應義塾大 一般 2,199 2,035 2,248
順天堂大 前期一般 1,811 1,390 1,524
前期センター - - 702
後期センター 296 536 272
昭和大 Ⅰ期 1,347 1,446 1,523
Ⅱ期 903 942 1,005
帝京大 一般 3,327 4,669 4,615
センター 815 481
東京医科大 一般 2,231 1,680 2,267
東京慈恵会医大 一般前期 2,220 2,286 2,038
一般後期 1,817 1,537 1,562
東京女子医科大 一般 938 1,108 1,219
東邦大 一般 2,340 2,335 1,637
日本大 一般 2,151 2,235 2,858
日本医科大 一般 1,762 1,670 2,007
北里大 一般 1,470 1,642 1,585
聖マリ医科大 一般 1,888 1,855 1,679
東海大 一般 3,490 2,438 2,395
金沢医科大 一般 1,827 2,133 2,331
愛知医科大 一般 2,086 2,267 2,265
藤田保健衛生大 一般 1,536 1,855 1,580
センター 367 466
大阪医科大 一般 1,187 1,389 1,419
センター 386
関西医科大 一般 1,437 1,606 1,473
近畿大 一般前期 1,328 1,806 1,409
一般後期 630 947 953
C方式前期 422 282 331
C方式後期 154 117 141
兵庫医科大 一般 1,746 1,704 1,641
川崎医科大 一般 1,270 1,275 1,544
久留米大 一般 1,496 1,627 1,814
産業医科大 前期 433 809 1,658
後期 136 153
福岡大 一般 1,736 1,686 1,975
合計 59,988 63,874 66,119


【2007年度入試のポイント】
まず、2007年度入試での主な変更点について触れていきたい。2006年度入試で注目を浴びた川崎医科大学の推薦入試であるが、2007年度入試では中国・四国地区の高校出身もしくは同地区に本人か保護者が居住という制約が設けられた。現浪制限や評定平均の制限がない点は魅力的であるが、地域限定の制約の影響は大きく、志願者はかなり減ることが予想される。推薦入試ではこのほかに兵庫医科大学の評定平均値が4.0以上から3.8以上に引き下げられた。
また、一般入試では日程の変動が大きい。最大の変更点は東京慈恵会医科大学の一般入試が1月28日に一本化されることだろう。前期後期と2期に分けて実施していた入試日程は4年で幕を閉じることになった。長年、一次試験が国公立前期日程と重複していたが、別日程となることで今後の動向が注目される。1月28日は北里大学、藤田保健衛生大学、近畿大学と4校の試験日が重複するため、志願者自体はそれほど多くはならないだろうが、国公立との併願者が増加することは十分に考えられるため、難易度は一段と激化するであろう。他では埼玉医科大学が2月4日に前期試験を実施することも注目すべき変更点であろう。この2月4日は昭和大学、北里大学、東邦大学の2次試験と重複する。このため医学部受験上位層はいずれかの2次試験に回る可能性が高い。帝京大学の試験日とも重複するこの日はボーダーライン上の受験生にとっては勝負の一日になるだろう。前期試験の影響により埼玉医科大学の後期試験は定員が35名に減少するため、後期試験はかなりの高倍率になることが予想される。また、例年2月13、14日の2日間で試験を実施していた久留米大学が日程を大幅に変更し、1月31日に1次試験(学科試験)を実施し、2月13日に2次試験(小論文・面接)を実施する。さらにはセンター試験前に1次試験を実施していた川崎医科大学が1月27日に試験日をずらしてきた。この結果、例年に比べると1月下旬から2月上旬にかけて試験日が集中する形になった。4頁の一般入試日程表をみてほしい。1月27日に東邦大学・昭和大学・川崎医科大学の3校、1月28日は上記のとおり4校の1次試験が重複している。この日から2月8日の日本大学の1次試験までの期間は2次試験の実施も重なりかなりの過密日程だ。2次試験の日程も踏まえ、受験校の選択には慎重を期してもらいたい。
また、ボーダーライン上の受験生にとっては2月4日から6日の3日間は勝負どころになるだろう。前述した2月4日だけでなく2月5日は帝京大学と東京女子医科大学が重複し、2月6日は帝京大学と東海大学そして岩手医科大学と藤田保健衛生大学の2次試験が重複する。東海大学を除くと受験者層の似通った大学の試験日が重複しており例年よりチャンスは大きいと思う。
上記のとおり、2007年度入試は例年になく試験日の重複が激しい。受験校の選択によっては明暗を分けるケースもでてくるだろう。受験校の選択は慎重に行い、くれぐれも1年間の努力を無にするような選択をすることだけは避けたいところだ。自分の実力をしっかりと把握し、行きたい大学、実力に見合った大学、出題傾向や出題形式の相性がいい大学などを見極め、バランスよく受験校を選択することが大切だ。最初の試験でつまずくと自信をなくしてしまうケースもある。難関校を目指す生徒であっても緊張しやすいタイプの人は早めに一次合格を勝ち取っておくとその後の試験では精神的に随分と違うようだ。また、試験が続いても力を発揮できるタイプなのかどうかという判断も大切だ。試験日が集中しているからといって、連日のように受験して力を発揮できなかったというのでは本末転倒だ。また、2次試験の会場によっては長距離の移動を強いられるケースもでてくるだろう。本命の大学では多少の無理も必要だろうが、無理は禁物だ。言うまでもないことだが、体調管理にも十分気をつけてほしい。

【医学部合格に向けて】
 近年、医学部の人気の高さや高い倍率が注目されている。国公立との垣根も減ってきており、私立医学部の中でも難関校といわれている大学は競争が激化し、入りにくくなっているというのは事実だろう。しかし、難問奇問を問うような大学やそういった問題が解けなければ合格できないという大学はそう多くはない。どちらかといえば標準レベルの問題を取りこぼさなければ合格に結びつくケースが多いようである。英語・数学・理科2科目の標準問題レベルを全範囲もれなくマスターできている生徒がどこの医学部にも合格できなったというケースはあまり見かけない。すべてをマスターするというのは標準レベルといえども大変な部分も多いと思うが、科目、分野などに分けて考えれば先も見えてくるだろう。あせることなく一歩一歩確実に力をつけていけば決して到達できないレベルではないはずだ。小手先のテクニックや安易な対策に流されることなく、しっかりとした実力を身につけることが合格への一番の近道だろう。
科目別に見ていくと私立医学部入試では英語が苦手な生徒は苦戦している傾向にある。形式にとらわれずにどんな模擬試験でも偏差値60を切らない安定した実力が欲しいところだ。他では化学が分野によって苦手意識を持っているような場合、やはりいい結果が出ていないようである。総合的に力はあるが合格していないというような場合、英語と化学いずれかに弱点を抱えているケースが多い。4科目バランスよく力をつけていくことが大切だが、この2科目は注意しておいて損はないだろう。
学科の力が備わればあとはやることは限られてくる。小論文や面接などの対策をきちんととること。正確な情報を把握し、自分にとっての正しい受験校を選択すること。そして最後に体調管理をしっかりと行い、入試当日、自分の力を100%発揮すること。以上をきっちりとこなして合格にたどり着かないということはない。 医学部の場合、入学後も勉強が大変だと感じる生徒も少なくはない。6年後には医師国家試験も控えており、この試験に合格しなければ医師になることはできない。“医師になる”という大きな目標のために医学部受験という最初の関門はしっかりとした土台を築いた上で、勝ち抜いて欲しいと思う。


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