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総論

2010年度入試動向【総論】

【18才人口4割減】
 1992年のピーク時には204万5千人であった18才人口は17年後の2009年には121万2千人まで減少した。(総務省統計局) 17年間で83万3千人、40%以上18才人口は減少した。18才人口減少のピークは緩やかになったものの4割もの人口減はやはり大きく、大学志願者も92年には91万2千人であったが09年では66万7千人にまで減少した。(文部科学省 学校基本調査速報)
 大学志願者が減少した要因として、見逃せないのが、既卒生(浪人生)の大学志願者の減少である。92年のピーク時には約30万人だった浪人生は約8万人にまで減少しており、7割を越える減少である。浪人生減少の理由として大学入試全体の競争が緩和したこともあるが、受験生の気質の変化も見逃せない。受験生の進学先が「行きたい大学」から「行ける大学」に変化してきており、浪人してでも「あの大学・あの学部」という受験生が減った結果、受験生が現役で「行ける大学」に進学した結果が浪人生の減少につながっている。そうは言っても受験生の人気を集める大学・学部は相変わらず志願者が多く、その難関ぶりは変わらない。日本私立学校振興・共済事業団の調査によれば560大学中46.5%の265大学が定員割れをしている現状で、変わらぬ人気を集めている大学もある。このような二極化の動きは今後、ますます強まっていくだろう。
 大学入試を取り巻くこのような状況の中、どの大学も優秀な学生を確保したいという考えは同じで、その結果、入試は多様化している。90年に初めて慶応大学で実施されたAO入試は国公立大学でも約4割の大学で実施されるまでになった。最近では、全学部が同じ問題で同日に行う全学部入試を実施する大学も増えてきた。ここ数年は、各大学が入試改革を行ってきている。受験生としては、安易にこれまで通りと考えずに正確で最新の入試情報で確認してもらいたい。


(万人)
  2008年度 2009年度 2010年度
高校卒業者数 108.9 106.3 106.5
現役大学志願者数 58.2 58.3 58.6
現役大学志願率 53.4% 54.8% 55.0%
浪人大学志願者数 8.7 8.4 8.0
大学志願者数 66.9 66.7 67.0
大学入学者数 60.7 60.9 61.0
(国公立) 12.9 13.0 13.0
(私立) 47.8 47.9 48.0
大学入学率 90.7% 91.3% 91.6%
文部科学省 学校基本調査速報
(2010年度はメルリックス学院予想)


【センター試験は難化】
 09年度の大学入試センター試験(以下センター試験)は、節目となる20回目のセンター試験であった。初年度43万1千人だったセンター試験の志願者も20回目の09年度は前年比0.1%増の54万4千人にまで拡大した。
 試験結果だが全22科目中16科目で平均点が下がった。特に受験者数が最も多い英語(筆記)の平均点が10.24点下がったことが目に付く。リスニングを含めると15.66点の低下であった。国語は6.18点、数学も2.5点の平均点ダウンで主要科目は軒並み難化した。この結果、文系・理系とも総合点で平均点が下がり、理系(900点満点)で570点程度、文系で550点程度になったと思われる。センター試験が難しかったため、実際の出願では全体的に慎重な姿勢が見られた。


(万人)
  2008年度 2009年度 2010年度
志願者数 55.3 54.3 54.4
(現役志願者数) 43.4 42.8 43.1
男子志願者数 32.2 31.5 31.4
女子志願者数 23.1 22.8 23.0
受験者数 51.1 50.4 50.8
受験率 92.4% 92.8% 93.3%


■主な科目の平均点                      (点)
科目 2008年度 2009年度 増減
国語ⅠⅡ 121.64 115.46 -6.18
英語・筆記 125.26 115.02 -10.24
英語・リスニング 29.45 24.03 -5.42
数学ⅠA 66.31 63.96 -2.35
数学ⅡB 51.01 50.86 -0.15
物理Ⅰ 64.55 63.55 -1.00
生物Ⅰ 57.64 55.85 -1.79
化学Ⅰ 64.21 69.54 5.33
地学Ⅰ 59.68 51.85 -7.83
世界史B 58.98 62.70 3.72
日本史B 64.27 57.94 -6.33
地理B 66.36 64.45 -1.91
現代社会 60.55 60.19 -0.36
倫理 67.58 71.51 3.93
政治経済 63.73 69.31 5.58
独立行政法人 大学入試センター


【国公立大学は志願者減少】
 センター試験の志願者は前年から僅かながら増加したが、国公立大学の志願者は47万5千人と前年から1万3千人、2.6%の減少であった。一般的に考えればセンター試験の受験者が増えれば、国公立大学の志願者も増えそうなものだがそうはならなかった。その理由として、ひとつには私立大学のセンター試験利用入試のためにセンター試験を受験する層が少なからずいることが挙げられる。もう一点、今年1月のセンター試験が難しく、平均点が理系も文系も揃って下がったことが影響している。「センター試験がうまく行けば、国公立大学に出願」と考えていた受験生が、センター試験の難化により思いの外、得点が伸びず、少なくない受験生がそもそも国公立大学は無理と判断したと考えられる。
 国公立大学全体では志願者が減少したものの、いわゆる旧七帝国大学など人気難関校は底固く志願者を集めた。センター試験が難化すれば難関大学ほど志願者が減りそうなものだが安定して志願者を集めた。目立ったのは名古屋大学の理学部で前年比で10%以上志願者を増やした。これはノーベル物理学賞を受賞した益川敏英、小林誠の両氏が名古屋大学理学部の卒業生であることによる。名古屋大学に限らず学部別では理学部が最も高い伸びを見せた。一方、歯学部は15%を超える大きな志願者減となった。
 さて、国公立医学部であるが、09年度入試では医師不足解消のため全ての国公立大学医学部の定員が増加となった。国公立大学全体では定員が420人増え、5,098人となった。しかし、センター試験の難化の影響は大きく、志願者は817人、2.7%の減少であった。


■国公立医学部志願者数                   (人)
  2007年度 2008年度 2009年度
前期 17,092 17,240 17,041
後期 13,262 13,269 12,651
合計 30,354 30,509 29,692

 国公立大学の歯学部だが、志願者は15.2%減と全学部中、最も大きい志願者減となった。これで国公立歯学部は5年連続の志願者減となった。5年前の04年度入試では4,549人の志願者を集めたが、今春の09年度入試では志願者2,741人と5年で40%の大幅な減少となった。

■国公立歯学部志願者数                   (人)
  2007年度 2008年度 2009年度
前期 2,214 1,866 1,575
後期 1,487 1,368 1,166
合計 3,701 3,234 2,741


【二極化が進む私立大学】
 日本私立学校振興・共済事業団によれば私立大学570校中ほぼ半数の265校が定員割れとなっている。ここ数年、私立大学の定員割れのニュースがたびたび報道されているが、早稲田大学や慶應義塾大学に代表される人気校と学生募集に汲々とする大学との二極化がますます明確になりつつある。学生数を確保するために推薦入試やAO入試で学力試験を課さずに入学を許可する結果、大学生としての基本的な学力を不安視する声も最近ではよく聞かれる。
 その一方で、いわゆる人気校も優秀な学生を集めるために様々な入試改革を行っている。センター試験利用入試はそのひとつであるが、最近ではひとつの大学の全学部が同一日に同一問題で入試を行う「全学部入試」の導入が目立つ。学生の質を確保するため、数を確保するためを問わず、私立大学では「選抜方法の多様化・複線化」が進んでいる。


【2010年度入試展望】
 2010年度入試では、大学受験生全体の数は久しぶりに増えそうだ。また2009年度は平均点がかなり下がり難化したセンター試験であるが、これ以上平均点が下がることは考えにくく、むしろ平均点は上がると見ていいだろう。ただ、センター試験の点数が良くても安心してはいけない。平均点が上がったことで、自分自身の成績が良く見えるだけかもしれない。自分の本当の意味での「出来」を冷静に判断する必要がある。更に個人所得の落ち込みなど不況の影響も少なからずあるだろう。当然学費負担の少ない国公立大学志向は拡大すると考えられる。また、私立大学では併願校数の絞り込みも考えられる。
 AO入試は更に広がりを見せ国公立大学では4割を超える66校が実施する。私立大学でも全体の8割、463校がAO入試を行う。AO入試は大学により試験内容が様々であるからAO入試を受験するのであれば志望校の試験内容の把握は欠かせない。
 私立大学は青山学院大学の全学部日程入試の導入など入試の多様化が更に進む。センター試験利用入試も兵庫医科大学など11大学が新たに導入する。これにより私立大学の8割がセンター試験利用入試を行うことになる。私立大学の入試は毎年多くの変更があり、複雑になっている。入試方式、内容については最新の情報をきちんと確認することが必須である。
 忘れてならないのが国公立、私立を問わず、医学部(医学科)の定員増である。2009年度入試では、医学部全体で693名の定員増が行われたが2010年度入試でも更に最大369名の定員増が予定されている。これが実施されれば、医学部全体の定員は8,855名となる。ただ、増えた定員が一般入試に振り向けられるとは限らない。今後各大学から文部科学省に申請し、その後正式決定となるため詳細が明らかになるまで多少時間がかかるかもしれない。出願を考えている大学があれば各大学のホームページに注意を払う必要がある。
 またいわゆる「地域枠」も広がりを見せ、国公立では長崎大学、大阪市立大学で新たに設定される。私立でも獨協医科大学、東京医科大学、兵庫医科大学、久留米大学、福岡大学で新たに導入される。
 変化し続ける大学入試をしっかり把握してもらいたい。


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