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医学部の入試動向

2008年度入試動向【医学部】

【志願者数7万人を目前に!】
 5年連続で過去最高の志願者数を更新してきた私立医学部だが、2007年度入試でも過去最高の志願者数を更新し、とうとう6年連続で志願数を増加させている。他の学部が志願者集めに苦労している中、私立医学部に関してはそのような状況とは無縁の状態が続いている。医学部人気に加え、昭和40年代に設置されたいわゆる新設医大卒の医師の子弟が受験期を迎えつつある今、医学部の受験生は少子化の恩恵を受けにくい状況が続くと考えられる。また、地方国公立医学部を避け、都市部の私立医学部を選択する受験生も増加している。私立医学部の場合、都市部にある大学も多いため、志願者の増加傾向に拍車をかけている。以前に比べると国公立大学医学部を志望する受験生と私立医学部を志望するも受験生の垣根は確実に減少している点も見逃せない。

 では2007年度入試について細かく見ていきたい。まず推薦入試であるが、全体では2,168名(前年比95.8%)とやや減少したものの、2007年度入試より中国・四国地区の高校出身もしくは同地区に本人か保護者が居住という制約を設けた川崎医科大学が104名志願者を減少させたのが目立つ程度で、各大学ほぼ前年並みに志願者を集めている。評定平均値を4.0以上から3.8以上に引き下げた兵庫医科大学では前年より9名増の志願者を集めたが、受験生にとってはさほど大きな影響はなかったようだ。また、2006年度入試で683名を超える志願者を集めた東海大学の編入試験であるが2007年度入試での志願者数は625名とやや減少した。それでも倍率は15倍を超え相変わらず高い人気を誇っている。医学部再受験の熱気もまだまだ続いているようである。


■2007年度私立医学部志願者数(推薦入試)(人)
       
大学名 区分 2005年度 2006年度 2007年度
岩手医科大公募 50 71 69
獨協医科大 指定校 38 69 66
AO 47 91 119
埼玉医科大 公募*1 48 43 60
東京医科大 公募 88 87 87
東京女子医科大 指定校 8 8 8
公募 72 94 90
北里大 指定校 35 36 53
聖マリアンナ医科大 指定校 56 51 55
金沢医科大 公募 72 90 76
AO 155 173 141
愛知医科大 公募 38 40 60
推薦依頼 37 32 49
藤田保健衛生大 公募 407 402 354
関西医科大 公募 72 69 64
近畿大 公募 272 288 308
兵庫医科大 公募 79 79 88
川崎医科大 特別推薦*2 105 197 93
久留米大 公募 51 60 65
産業医科大 公募 86 123 95
福岡大 公募*3 130 160 168
合計 - 1,946 2,263 2,168

*1 指定校含む
*2 2005年度まで付属校含む公募の人数、2006年度より特別推薦の人数
*3 2005年度まで付属校を含む人数



 一般入試での動きはどうであっただろうか。2007年度入試での大きな変更点は、東京慈恵医科大学が後期試験を廃止し、1月28日に試験日を一本化したことと埼玉医科大学が2月4日に前期試験を実施した、この2点であろう。まず、国公立大学の前期日程と1次試験日を重ねていた東京慈恵会医科大学の後期試験が廃止された結果を検証してみよう。もともと東京慈恵医科大学は後期日程の試験日しかなかったのだが、国公立大学との競合を避けるため4年前から前期試験を設け、準備期間を経ての後期試験廃止であった。志願者数は2006年度前期試験に比べて185名増の2,223名を集めた。2006年度入試では前後期試験合わせて、3,600名志願者を集めていたので、数字的には1,377名の減少となった。また、1次試験合格者数、正規合格者数、繰上合格者数がどうなるか注目されたが、1次合格者は493名とかなり多くなった。前期試験がなかった当時は1次合格者が140名程度だったことを考えれば、かなり余裕を持って1次合格者を出したことになる。正規合格者も定員100名に対し142名と国公立大学併願者をかなり意識したようだ。大学の見込みどおり、繰上合格も192名にのぼり、正規合格と合わせると総合格者数は334名と1次合格者の7割近くが最終合格となった。入学者数は102名なので実に232名が入学を辞退したということになる。この大部分が国公立大学へ進学したと考えられ、非常にレベルの高い入試になっている。2008年度入試もこの結果をベースに考えていいだろう。2007年度入試より前後期試験を導入した埼玉医科大学は前期試験で2,101名もの志願者を集めた。これまで、その年の最後の医学部入試という感覚で多くの受験生を集めていた埼玉医科大学だが、他の医学部と重複する日程に試験日を組み込んでも多くの志願者を集めた。後期試験こそ定員の大幅な削減の影響を受け、志願者を761名も減らしたものの、前後期合わせての志願者総数は前年の1.5倍の4,004名を集めた。
 その他では、前年より701名志願者を増やした聖マリアンナ医科大学が目に付いた。聖マリアンナ医科大学は2006年度入試では、東京慈恵医科大学や東邦大学といった都市部の大学と試験日が重複したため志願者を減らしたが、2007年度入試では自治医科大学と久留米大学との重複だったため、都市部志向の受験生を集め、志願者数を伸ばしたものと考えられる。近年、受験生の都市部の大学への人気は高まる傾向にあり、他でも日程の影響はあるものの東邦大学(343名増)や北里大学(337名増)といった首都圏の大学が志願者を伸ばしている。また、2007年度入試より2次試験を実施した久留米大学であるが、聖マリアンナ医科大学と1次試験日が重複した影響は大きく、前年より495名(前年比72.7%)志願者を減らした。同様に、これまで1月初旬に1次試験を実施していた川崎医科大学も東邦大学・昭和大学と重複する1月27日へ試験日を変更した影響を受け、388名(前年比74.9%)志願者を減らしている。
 個々に見ていくと大幅な増減があるが、センター利用入試を除く一般入試の志願者総数は前後期あわせて、前年の60,681名から62,221名と1,540名増加している。一人当たりの受験校数が増加している影響ももちろんあるが、国公立医学部が志願者を減らしているのに比べ対照的な動きである。2007年度入試ではセンター試験の難化により、一部受験生が私立難関校に流れたという動きはあるだろう。しかし地方国公立医学部と首都圏私立医学部とを比べたとき、学費を理由に単純に国公立医学部を選ぶという状況ではなくなっていることだけは確かだ。後述するが、私立医学部でも学費を減額する動きも出てきており、これまで国公立一本できていた受験生も私立医学部を併願先の一つとして考える傾向が出てきている。こういった面も私立医学部の志願者が増え続けている要因のひとつだろう。
 一般入試では志願者数を増やし続けているが、センター利用入試では前年の5,448名から5,032名と416名志願者を減少させた。この中では2次試験を課さない近畿大学と2次試験では面接のみを行う藤田保健衛生大学が志願者を増やしている。センター利用入試では合格ラインが90%を超えることもあり、難化しすぎたための受験生離れという面もあるが、2次試験で小論文や学科試験を課すのかどうかも志願者数に影響があるようだ。センター利用入試の2次試験も2月中旬から下旬にかけて行われるため、2007年度入試のように1月下旬から切れ間なく試験日が続くような日程になると、受験生心理としても合格可能性が高くない試験のために2次試験まで受けに行くのは気が重いのかもしれない。私立医学部のセンター利用入試はレベルが高いだけでなく、募集枠も少ないため、受験生にとっては位置づけが難しい試験になっているようだ。

■2007年度私立医学部志願者数(一般入試)(人)
大学名 区分 2005年度 2006年度 2007年度
岩手医科大 一般 1,835 1,783 1,908
自治医科大 一般 2,262 2,278 2,567
獨協医科大 一般 1,632 1,562 1,428
センター 1,009 1,076 966
埼玉医科大 前期一般 - - 2,101
後期一般 2,746 2,664 1,903
杏林大 一般 2,282 2,160 2,201
センター 1,466 1,593 1,290
慶應義塾大 一般 2,035 2,248 2,259
順天堂大 前期一般 1,390 1,524 1,590
前期センター - 702 557
後期センター 536 272 130
昭和大 一般Ⅰ期 1,446 1,523 1,578
一般Ⅱ期 942 1,005 1,210
帝京大 一般 4,669 4,615 4,148
センター 815 481 442
東京医科大 一般 2,393 2.267 2,267
東京慈恵会医科大 一般(前期) 2,286 2,038 2,223
(一般後期) 1,537 1,562 -
東京女子医科大 一般 1,108 1,219 1,266
東邦大 一般 2,326 1,647 1,990
日本大 一般 2,235 2,858 2,955
日本医科大 一般 1,670 2,007 1,785
北里大 一般 1,642 1,585 1,922
聖マリアンナ医科大 一般 1,855 1,679 2,380
東海大 一般 2,438 2,395 2,730
金沢医科大 一般 2,133 2,331 2,301
愛知医科大 一般 2,267 2,265 2,042
藤田保健衛生大 一般 1,855 1,580 1,570
センター 367 466 655
大阪医科大 一般 1,389 1,419 1,613
センター - 386 229
関西医科大 一般 1,606 1,473 1,531
近畿大 一般前期 1,806 1,409 1,481
一般後期 947 953 1,123
C方式前期 282 331 658
C方式後期 117 141 105
兵庫医科大 一般 1,704 1,641 1,860
川崎医科大 一般 1,275 1,544 1,156
久留米大 一般 1,627 1,814 1,319
産業医科大 一般(前期) 809 1,658 1,834
(一般後期) 153 - -
福岡大 一般前期 1,686 1,975 1,980
合計 - 64,578 66,129 67,253


【2008年度入試のポイント】
 まず、2008年度入試での主な変更点について触れていきたい。2007年度入試では東京慈恵会医科大学の試験日一本化など大幅な日程変更があった私立医学部入試であるが、2008年度入試ではそういった試験制度面での大きな変化はない。最もインパクトのある変更点は順天堂大学の学費の改定だろう。改定前は6年間の学費合計額は2,970万円(寮費・諸会費除く)。私立医学部の中では安いほうであるが、慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学に比べれば高額であった。その学費が2008年度入試より大幅に減額し、6年間合計で2,090万円と慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学とほぼ同額となった。順天堂大学では1年生は千葉での寮生活だが、2年生からは東京での生活となる。国公立志望者の併願先としては学費的にも立地的にも大いに魅力的だろう。日程的にも重複する大学がないので2008年度入試では志願者を集めるだろうが、受験者層のレベルもかなり上がることが予想される。この他では昭和大学も6年間合計で400万円学費を減額し、2,650万円とする。昭和大学の場合は、特待制度での減額も大きく、Ⅰ期試験での合格者上位90名(実質的には正規合格者)にはさらに650万円の学費が免除される。条件付ではあるが、Ⅰ期試験の正規合格者の6年間の学費合計額は2,000万円となり、慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学と同レベルの学費になる。Ⅰ期試験の正規合格者のみという点では受験生にやや敬遠される可能性もあるが、昭和大学も順天堂大学と同様にこれまで以上に、高いレベルの受験者を集めるのではないだろうか。私立医学部難関校は2008年度入試ではさらに難化することが予想されるが、国公立医学部志望者の私立医学部難関校への流入は中堅校やボーダー校の合格ラインにも影響が出てくることは間違いないだろう。
 さて、日程的にはどのような変動が見られるだろうか。日程順に見ていくと、まず金沢医科大学が1月16日から24日へと一次試験日を変更している。この結果、センター試験前での私立医学部の試験がなくなることになった。2007年度入試で最も重複していた1月第4週の土日は2008年度入試でもまったく同じになった。2次試験日に若干変更があるものの、志願者の動向に与える影響はほとんどないだろう。また2007年度入試で志願者を大幅に増やした聖マリアンナ医科大学は重複する大学が久留米大学から自治医科大学へと変わったが、都市部の大学との重複ではないため、2008年度も同様に志願者を集めることが予想される。久留米大学は2月1日へと試験日を移したが、杏林大学、兵庫医科大学との重複となり、首都圏だけでなく関西圏の受験生も逃げる可能性があり、2008年度入試でも志願者を集めるのに苦労するかもしれない。ボーダーライン上の受験生にとって気になる埼玉医科大学と帝京大学であるが、重複する大学に若干の変化はあるにせよ志願者数に及ぼす影響は限定的であると考えられ、2008年度入試においても前年と同様か、それ以上の志願者を集めることになるだろう。このように、2008年度入試では日程的には2007年度入試とほとんど変動がない。最近の受験生の都市部への志向性を考えると、志願者数が多いからといって地方の医学部を選択するとは考えにくい。大幅な増減はあまりなく、各大学とも前年と同水準の志願者を集めるのではないだろうか。

 また、2008年度入試では11大学で医学部の入学定員の増加(計110名)が予定されている。医師不足が深刻と認められる県において、医師不足解消のため定員の増加が容認される方向である。私立医学部では岩手医科大学と自治医科大学が現在、入学定員の増加を申請している。国公立大学が中心である上に、都市部の大学での増加はない。このため私立医学部入試への影響は限定的である。しかし、医学部ではこれまで定員を抑制する方向で動いてきたので、臨時的な措置とはいえ入学定員を増加させる動きには今後も注意が必要だろう。

【医学部合格に向けて】
 近年、医学部の人気の高さや高い倍率が注目されている。国公立との垣根も減ってきており、私立医学部の中でも難関校といわれている大学は競争が激化し、入りにくくなっているというのは事実だろう。しかし、難問奇問を問うような大学やそういった問題が解けなければ合格できないという大学はそう多くはない。どちらかといえば標準レベルの問題を取りこぼさなければ合格に結びつくケースが多いようである。英語・数学・理科2科目の標準問題レベルを全範囲もれなくマスターできている生徒がどこの医学部にも合格できなかったというケースはあまり見かけない。すべてをマスターするというのは標準レベルといえども大変な部分も多いと思うが、科目、分野などに分けて考えれば先も見えてくるだろう。あせることなく一歩一歩確実に力をつけていけば決して到達できないレベルではないはずだ。小手先のテクニックや安易な対策に流されることなく、しっかりとした実力を身につけることが合格への一番の近道だろう。
 科目別に見ていくと私立医学部入試では英語が苦手な生徒は苦戦している傾向にある。形式にとらわれずにどんな模擬試験でも偏差値60を切らない安定した実力が欲しいところだ。他では化学が分野によって苦手意識を持っているような場合、やはりいい結果が出ていないようである。総合的に力はあるが合格していないというような場合、英語と化学いずれかに弱点を抱えているケースが多い。4科目バランスよく力をつけていくことが大切だが、この2科目は注意しておいて損はないだろう。
 また、4ページの日程表を見てもわかるとおり、2008年度入試も試験日の重複が激しい。金沢医科大学の試験日の変更により、ますます過密スケジュールになっている。受験校の選択によっては明暗を分けるケースもでてくるだろう。受験校の選択は慎重に行い、くれぐれも1年間の努力を無にするような選択をすることだけは避けたいところだ。自分の実力をしっかりと把握し、行きたい大学、実力に見合った大学、出題傾向や出題形式の相性がいい大学などを見極め、バランスよく受験校を選択することが大切だ。最初の試験でつまずくと自信をなくしてしまうケースもある。難関校を目指す生徒であっても緊張しやすいタイプの人は早めに一次合格を勝ち取っておくとその後の試験では精神的に随分と違うようだ。また、試験が続いても力を発揮できるタイプなのかどうかという判断も大切だ。試験日が集中しているからといって、連日のように受験して力を発揮できなかったというのでは本末転倒だ。また、2次試験の会場によっては長距離の移動を強いられるケースもでてくるだろう。本命の大学では多少の無理も必要だろうが、無理は禁物だ。言うまでもないことだが、体調管理にも十分気をつけてほしい。

 医学部の場合、入学後も勉強が大変だと感じる生徒も少なくはない。6年後には医師国家試験も控えており、この試験に合格しなければ医師になることはできない。“医師になる”という大きな目標のために医学部受験という最初の関門はしっかりとした土台を築いた上で、勝ち抜いて欲しいと思う。


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