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2010年度入試動向【医学部】

【8年連続過去最高を更新】
 1975年前後にいわゆる「一県一医大構想」により国公立、私立大学の医学部が新たに設置され医学部定員がほぼ倍増した。しかし、医師が増えることにより医療費が増大することが危惧され、総医療費を抑制するために1984年以降国公立大学を中心に医学部の入学定員は約7%削減され、医師数の増加は抑制されてきた。しかし「妊婦のたらい回し」が大きな社会問題になるなどここ数年、医歯の不足・偏在が大きくクローズアップされ、国民全体が医療体制に不安を感じるようになった。これを受け、国もこれまでの医師数を抑制する方針を転換し「緊急医師確保策」「骨太の方針2008」など医師不足解消へ向け動き出した。
 医学部の定員増はその一環として行われ、私立大学の医学部も2009年度の一般入試では医学部を持つ29の私立大学のうち26大学で定員が増えた。中には、定員増を促されても、十分な準備期間がない中での定員増は教育の質に責任が持てないとして定員増を見送った愛知医科大学のような大学もあるが、ほとんどの大学の一般入試で定員が10名程度増員となった。これにより、09年度の私立医学部一般入試の定員は前年まで各大学、概ね100名であったが、249名の定員増ということは新たに医学部が2.5校できたのと同じくらいの定員増である。そう考えると大変な定員増ではあるが、7万1千人が志願する私立医学部入試全体から考えると更なる定員増を望むというのが受験生の偽らざる気持ちであろう。
 さて、2009年度の私立医学部入試であるが、一般入試、推薦入試、AO入試の志願者を合算した総志願者では09年度も過去最高を更新し、7万3千299人の志願者を集め、8年連続での増加となった。入試種別ごとに細かく見ていくと、AO入試では獨協医科大学は志望者が減少したものの金沢医科大学では26%増となり全体では4.5%、10人の志願者増であった。
 公募制の推薦入試全体では志願者が13人減少となったがこれは例年の志願者の増減の範囲を考えていいだろう。目立ったところでは藤田保健衛生大学が定員25名に対して志願者341名と37名増で志願倍率13.6倍であった。一方、産業医科大学では定員20名に対して72名が志願したが前年を44名下回った。新たに基礎学力試験を導入した岩手医科大学だが、前年と同じ71名を集め、基礎学力試験導入の影響は感じられなかった。医学部の推薦入試では公募制ではもちろんだが指定校制でも志望者全員が入学できるわけではない。例えば聖マリアンナ医科大学の指定校推薦入試は例年、実質倍率で2.5~3.0倍程度となる。指定校推薦とはいえ、3人に1人しか合格できないということだ。2009年度より指定校制推薦入試を導入した金沢医科大学では志願者5名全員が合格となった。高校が金沢医科大学の指定校になっているかどうかは、高校に確認するしかないが、合格の可能性が極めて高いので、指定校になっていれば、高校の校内選抜の基準は確認しておきたい。


■2009年度私立医学部志願者数(推薦入試)            (人)
大学名 区分 2007年度 2008年度 2009年度
岩手医科大 公募 69 74 71
地域枠 -- 31 31
獨協医科大 指定校 66 55 60
AO 119 83 57
埼玉医科大 公募* 60 47 38
指定校 -- -- 公募推薦に含む
東京医科大 公募 87 92 82
東京女子医科大 指定校 8 10 13
公募 90 46 67
北里大 指定校 53 52 49
聖マリアンナ医科大 指定校 55 41 40
金沢医科大 公募 76 88 88
AO 141 137 173
指定校 -- -- 5
愛知医科大 公募 60 41 51
指定校 49 52 50
藤田保健衛生大 公募 354 304 341
関西医科大 公募 64 62 52
近畿大 公募 308 269 273
兵庫医科大 公募 88 60 63
川崎医科大 特別推薦 93 78 78
久留米大 公募 65 54 51
産業医科大 公募 95 116 72
福岡大 公募 168 156 147
合計 - 2,168 1,948 1,952

* 指定校含む



 09年度の一般入試だが、志願者は7万1千277人と前年を千人以上上回り、4.2%増であった。ただ、これは定員増の影響もないとは言えないがそれ以上に底堅い医学部人気の表れと見ていいだろう。私立の医学部志望者は他学部に比べ格段に難しい入試であることは十分理解しての受験であり、多少の合格の可能性の大小で動く受験生は少ない。仮に定員が減ったとしても、志願者数が大きく落ち込むということは考えにくい。定員増は受験生にとっていいニュースには違いないが必要以上に定員増に目を奪われ楽観的になることには注意したい。
 2000年度の一般入試の志願者は4万5千501人だったが10年後の2009年度入試では7万1千人を超えた。10年間で私立医学部一般入試の志願者は2万6千人増え、5割以上も増加したことになる。1992年をピークに18歳人口が減少を続け、それに伴い大学志願者も24万5千人、約3割減少した。学部系統別に見れば、どの学部も志願者減の中、唯一医学部だけが全く違う動きを見せてきた。
 日本私立学校振興・共済事業団によると学部系統別の志願倍率で歯学部は2.6倍、看護などの保健系統学部は4.7倍、薬学部は6.6倍であり、10倍を超える学部系統は文系学部を含めない。これに対し、医学部は21.5倍で、突出した倍率となっている。これを見ただけで、医学部入試が他学部とは同列に論じられないことが分かる。
 この突出した医学部人気の理由についてはこれまで機会があるごとに再三、述べてきたので詳細は省くが、「受験生の資格指向」などということではなく受験者層の構造的な要因が最も大きい。私立医学部の受験者層の特質、構成を考えると私立医学部の志願者が今後も増え続けるかどうかは別にして、他学部には見られない激戦が続くことはまちがいない。
 ところで2009年度入試ではこれまでになかった特徴的な動きがあった。医学部の入学定員が国公立を含めて増加となったことで、複数校に合格した受験生の入学辞退がどう変化するのかの予測には苦労したようだ。例年であれば入学辞退者数と時期から繰り上げ合格者を何人出せばいいのかは経験的に各大学が分かっていた。しかし、2009年度入試では定員増の影響をどう読むのか各大学が最後まで頭を悩ませたようだ。金沢医科大学では(補欠(繰上げ合格候補)の通知を出していない受験生にまで繰上げ合格が回ってきた。また、例年3月25日頃には繰り上げ合格も落ち着きを見せるのであるが、4月に入っても動きがあった。


■2009年度私立医学部志願者数(一般入試)            (人)
  区分 2007年度 2008年度 2009年度
岩手医科大 一般 1,908 2,027 2,086
自治医科大 一般 2,567 2,404 2,469
獨協医科大 一般 1,428 1,364 1,675
センター 966 957 1,014
埼玉医科大 前期一般 2,101 2,305 1,683
後期一般 1,903 1,806 2,030
杏林大 一般 2,201 2,237 1,709
センター 1,290 1,257 1,215
慶應義塾大 一般 2,259 2,127 1,989
順天堂大 前期一般 1,590 2,177 2,122
前期センター 557 1,017 677
後期センター 130 242 119
東京都地域枠 -- -- 50
昭和大 一般Ⅰ期 1,578 2,037 1,986
一般Ⅱ期 1,210 1,334 1,239
センター -- -- 209
帝京大 一般 4,148 4,851 5,289
センター 442 523 571
東京医科大 一般 2,267 2,111 2,342
東京慈恵会医科大 一般 2,223 2,310 2,542
東京女子医科大 一般 1,266 1,227 1,308
東邦大 一般 1,990 1,818 2,380
日本大 一般 2,955 3,060 3,012
日本医科大 一般 1,785 1,803 1,960
北里大 一般 1,922 1,754 1,573
聖マリアンナ医科大 一般 2,380 2,729 2,751
東海大 一般 2,730 2,864 2,718
金沢医科大 一般 2,301 2,235 2,268
愛知医科大 一般 2,042 2,216 2,360
センター -- -- 438
藤田保健衛生大 一般 1,570 1,716 1,799
センター 655 585 677
大阪医科大 一般前期 1,613 1,440 1,527
一般後期 -- 539 581
センター 229 173 262
関西医科大 一般 1,531 1,321 1,524
近畿大 一般前期 1,481 1,467 1,310
一般後期 1,123 1,126 1,099
C方式前期 658 725 565
C方式中期 -- -- 123
C方式後期 105 131 76
兵庫医科大 一般 1,860 1,642 1,553
川崎医科大 一般 1,156 1,202 1,221
久留米大 一般 1,319 1,289 1,240
産業医科大 一般 1,834 1,760 1,683
福岡大 一般前期 1,980 2,201 2,253
合計   67,253 70,108 71,277


【注目大学の結果】
 まず前年、学費を下げたことにより志願者を増やした順天堂大学と昭和大学の2009年度一般入試の結果を見てみよう。前年は思い切って学費を下げたことにより、通常の一般入試で37%、センター試験利用入試で83%もの志願者大幅アップとなった順天堂大学であるが2009年度のセンター試験利用入試では前後期合わせて37%、463名の減少となった。これは前年の志願者大幅増の反動と併せて、センター試験そのものの難化の影響もあるだろう。しかし、通常の一般入試では志願者が若干減少したものの、ほぼ前年並みの志願者数を保っており、順天堂大学はもともと人気校ではあったが、学費値下げによる更なる受験生の人気は定着したようだ。また、順天堂大学では定員5名で東京都地域枠を新たに導入したが、志願者は50名で思ったほどの志願者数ではなかった。ひとつにはこの東京都地域枠を知らない受験生が少なくなかったと思われる。更にこの東京都地域枠で合格した場合、必ず入学することが受験条件となっているため国公立併願者や第一志望校が別の大学である受験生は出願をためらったと考えられる。
 前年、学費を下げ志願者を増やしたもう一校の昭和大学も順天堂大学同様、前年を若干下回ったとは言え、ほぼ前年並みの志願者数を保っており、昭和大学も学費値下げの効果は定着したと見ていいだろう。その昭和大学は新たにセンター試験利用入試を導入した。昭和大学のセンター試験利用入試は、センター試験を利用した地域別試験という独特な試験である。これは定員12名ではあるが、全国を6地域に分け、それぞれの地域ごとに定員2名が振り分けられている。定員が2名ということだけでなく、更に「合格者が定員を満たさない場合もある」とあることから、受験生としては手が出しにくかったようだ。これまでにない全く新しい入試として、注目を集めたが、志願者は209名と、センター試験利用入試の導入初年度としては静かなスタートとなった。
 センター試験利用入試はもう1校、愛知医科大学でも新たに実施された。こちらは定員5名に対し、438名と昭和大学の倍以上の志願者を集め志願倍率は87.6倍となり、導入初年度としてはまずまずのスタートとなった。また、これまでセンター試験利用入試を前期・後期と2回行っていた近畿大学が更に中期を追加し、定員2名に対し123名が志願し志願倍率は61.5倍となった。医学部のセンター試験利用入試はボーダーラインが90%前後と非常に高く医学部入試の中でも特に厳しい入試である。それだけ厳しい入試なので、医学部のセンター試験利用入試に期待をかけられる受験生はそう多くはない。そんな中で注目したいのが獨協医科大学である。同校はセンター試験利用入試で毎年1,000人程度の志願者を集めており2009年度も1,014人が出願した。これは定員が20人と比較的多いこともあるが、「少しでも合格の可能性の高い大学」ということで受験生がボーダーラインをよく比較研究した成果と見ていいだろう。
 前年、新たに定員10名で後期試験を導入しその年度の最後の医学部入試として注目され539名の志願者を集めた大阪医科大学は2009年度、定員を5名増やし前年をさらに上回る581名の志願者を集めた。年度最後の医学部入試ということが定着してきたと思われる。
 その他、志願者が増えた大学をいくつか見てみよう。まず東邦大学が前年から30%の志願者増となった。これは前年1次試験日が昭和大学と重なっていたが、それが解消されたことが大きい。昭和大学は北里大学、藤田保健衛生大学、近畿大学の3校と1次試験日が重なることになったが、ほぼ前年並みの志願者を集めた。獨協医科大学も東京医科大学との1次試験日の重複が解消されたことにより、23%の志願者増となった。
 一方、埼玉医科大学は前期日程で3割近い志願者のダウンとなった。さらに1次試験の欠席者も302名と予想通り多く18%の志願者が試験当日欠席している。この欠席者のほとんどが東邦大、川崎医大、昭和大、北里大の2次試験を受験するために欠席しており成績上位者がゴッソリ抜けたことになる。「今年の狙い目は埼玉医科大学前期」といい続けてきたとおりの結果なった。


【2010年度入試のポイント】
 激戦が続くことは間違いない私立医学部の2010年度入試だが、そのポイントを挙げておこう。まず推薦入試だが例年以上に変更が多い。東京女子医科大学、北里大学、愛知医科大学、福岡大学の4校で定員の変更がある。また、いわゆる「地域枠」だが新たに獨協医科大学(定員10名)、東京医科大学(定員3名以内)、兵庫医科大学(定員5名以内)、久留米大学(定員10名)、福岡大学(定員10名)で実施されることになった。この「地域枠」だが、各大学により名称も多少異なるが、出願条件も異なる。一般的には出身地も出願条件になることが多いが、久留米大学のように出身地の条件はない大学もある。しかし、いずれにしても何らかの縛りはあり、特に卒業後の条件には注意が必要だ。安易に地域枠で医学部に入学し、卒業後、医師としての活動に一定の制限が付いた時に大変な不満を感じるようでは、本人も大学も不幸である。出願条件はしっかり理解した上で受験してもらいたい。
 さて、一般入試だが、こちらも例年以上に変更が多い。学費の値下げをする大学が少なくない中、藤田保健衛生大学の初年度学費が100万円増額となった。このことに受験生がどう反応するのか注目したい。では入試日程を見てみよう。今年は入試日程が明らかになるにつれて、驚きを禁じ得なかった。これまで以上に大学間での日程調整もあったと聞いた。結局、最終的に決まった入試日程は、1月16日、17日のセンター試験を経て、1月20日の岩手医科大学の一次試験から始まり、3月10日の大阪医科大学後期まで、1次試験日の重複が極めて少なくなった。これまで毎年1次試験日の重複がいくつかあり受験生は頭を悩ませてきたが、2010年度入試ではそういった悩みは少なくなるだろう。
 しかし、1次試験が分散したことにより例えば1月20日から2月2日まで14日間連続で医学部の1次試験が続くことになった。更に1日空いてから5日間連続となる。もちろんその空いた1日(2月3日)には二つの大学の2次試験がある。そういった意味で言えば、全く試験がない日は2月24日まで待たなければならない。1月20日から1ヶ月以上連日入試が続くことになる。
 2010年度入試では例年ほぼ固定されていた1次試験日の順番も変更が目立った。例年2月1日が1次試験回であった杏林大学が1月22日に繰り上がった。同様に関西医科大学、兵庫医科大学の関西2校の試験日が早まった。逆に愛知医科大学、聖マリアンナ医科大学の1次試験日は例年に比べ遅くなった。また、1次試験日が重なることが多く、昨年も重なっていた昭和大学、北里大学、近畿大学、藤田保健衛生大学も試験日が重ならなくなった。
 こういった状況であれば、尚のこと、どの大学をどう受けていつ休むのか、実際の受験戦略が極めて重要になる。
 では、実際の受験校はどう考えていったらいいのであろうか。まず、第一志望校の日程は押さえなければならない。その他、どうしても受けたい大学も同様に試験日を押さえよう。次にどの大学から受験をスタートさせるのかを考える。1月20日の岩手医科大学からなのか翌日の金沢医科大学からなのかそれとも次の杏林大学、東邦大学あたりからなのか、ここを決めよう。後は日程を見ながら受験校を決めていけばいいのだがこの時注意することは1次試験を何日続けて受けるのかということと、移動はどうなるのかの2点である。何日連続しても大丈夫かということに関しては人により差があるが一般的には3日連続までであろう。また、獨協医科大学や川崎医科大学のように移動が伴う場合も要注意だ。地方の受験生の場合はどの会場で受験するかも忘れてはならない。東京を拠点にすると移動は少なくなる。更に2次試験日も考えなければならない。幸い2010年度入試は2次試験日もうまく分散していて1次試験日とそれほど重ならないが試験日選択制の場合、いつにするのか、2次試験は移動を伴うことが多いので移動時間は大丈夫か、も考える必要がある。ただ2月7日は5校の2次試験が重なる、2月13日も6校の2次試験が重なる。2次試験が重なることも考えて受験校を最終的に決める必要がある。
 さて、2010年度の狙い目と言える大学であるが、今後、模試の大学別の志望動向などを参考に絞り込んでいく。メルリックス学院のホームページや学院長ブログを通じてお伝えしていきたい。



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